藍空ブログ

備忘録として。日々のことを綴っています。自己満足なのであしからず

その4 宮部みゆきさん 『ペテロの葬列』

こんにちはー!!

今日も早速本のレビューをしていこうと思います!!

今回は第2回に引き続き、宮部みゆきさんが書いた杉村三郎シリーズの第3弾『ペテロの葬列』を紹介します!

 

前回紹介した『名もなき毒』では、杉村三郎の元にクレイジー女による逆パワハラ?と連続毒殺事件が降りかかります。

 

『ペテロの葬列』ではより強大で凶悪な事件に

またまた巻き込まれてしまいます。。。

 

 

ここからは感想

※若干のネタバレを含みます。

 

いやー、想定外の連続!!特に一番最後が、、、

(でも、読んでて三郎やばいぞと、菜穂子さん寂しがってるよ!って部分はあった)がまさか最後にああなるとは、、、

 

3作品を通して言えることは、これはただの推理小説ではないということです。

 

事件を通して、正義とは、と言った社会的な訴えと共に家族の絆、家族とは、といったヒューマンドラマの2つの要素を表現しているように感じます。

 

そして自分がめちゃめちゃ印象的だったのは

ST(感受性訓練)の部分。

STとは『センシティブ・トレーニング』の略で、作中では企業戦士を鍛えるために、個人の内面を掘り下げ、能力を底上げさせるものと述べていました。

小説ではSTの教官のことをトレーナーと呼び、このトレーナーの存在が物語の一つのキーとなっています。

 

実はこれ私の前職がとある大手ホテルチェーンだったのですが、新入社員研修というものがありまして、これが正にSTなんじゃないかと思う部分が、、、

 

『STの会場として使われるのは、ほとんどの場合、山中のロッジとか、日常を離れた場所なんだ。(中略)いずれにしろ外界から隔離された場所で、研修期間中は受講者達は外出を許されない。起床から就寝まで、トレーナーのスケジュールに従って規律を守って暮らすんだ。(本文より抜粋。)』

 

実際の研修では、

山奥のロッジに2週間立てこもり、携帯は没収される。

朝は5時起床、23時就寝。

↑もろそのままじゃないですか、、!??

 

因みにやった事は社訓の暗唱、自分の長所、短所などをまとめた自己紹介、挨拶練習(合格と言われるまで延々と30分くらいチームでひたすら挨拶する)→これが何故か合格するとみんな泣く

といったもの。。。あっ、あと毎日日記書かされてました

 

これめっちゃSTじゃん!!って読んでてびっくりしました。

 

※もちろん作中と異なる部分も沢山あります。

  物語では誤った指導を行うトレーナーの存在に対して疑問を呈していますが、自分の研修の指導の方は外部の方ではなかったですし、良い方でした。

 

でも一つ言いたいことは、新入社員研修という場と、用意された内容には、選択肢が全くなく、普通に考えれば異様な状況なのに、みんながやっているんだからこれは正しいことなんだ、間違っていないんだ、いやむしろこれに異を唱えることが間違っているとも思えるような今考えると変な違和感がありました。

 

作中では杉村三郎の義父であり、杉村が務める今多コンツェルンの会長、今多嘉親がトレーナーに関してこのように述べています。

 

『人間は基本的に善良で建設的だ。だが、特定の状況に置かれると、それでもなお善良で建設的であり続けることが出来るタイプと、状況に呑まれて良心を失ってしまうタイプに分かれる。その(特定の状況)の典型的な事例が軍隊であり、戦争だ。』

『誰かを攻撃するのが楽しいことがある。相手が追い詰められるのを楽しむんだ。人間には誰でも、そういう邪な部分がある。だがそれ以上に邪悪なのは、そういうふうに他人を駆り立てることだ。煽ることだ。それが正しいと、他人の頭に刷り込むことだ。』(文中より引用)

 

人の上に立つというのはとても責任のある事で、一歩間違えると下の人間(教える人間)の尊厳、ひいては生存権を平気で脅かしてしまいます。教育とは尊いものだと今多は言います。

 

私の新入社員研修時の違和感もここにあるのかもしれません。

(私の場合トレーナー(指導員)というよりは、こういった環境を新入社員研修としている会社の方針が謎でしたね。)

これが正しいのが、誤っているのか、やりたい、やりたくないの判断基準がない場ってとても怖いです。

 

 

この今多嘉親は大企業のトップでありながら、気取ることなく、常に冷静な判断と助言を杉村にします。こんな会長いて欲しい。。。

(私の経験上の会長は、みんな元気??はっはっは、、売上もっとあげてーーー。と余計な口出ししかしないです、、、今のところ)

 

感想ぐちゃぐちゃになっちゃいました、ごめんなさい笑

 

物語はSTの部分をきっかけに過去に起きた大事件へと結びついていきます。。。

 

言葉のもつ重さ、鋭さ、怖さを強く感じさせてくれる小説でした。