レビューその2 宮部みゆきさん 『名もなき毒』
こんにちは。
※若干のネタバレを含みます。
こちらは「杉村三郎」シリーズといったお人好しの主人公の杉村三郎がひょんなことから事件に巻き込まれていく様を描いたシリーズの2作目。
第一作の「誰か」では、あることがきっかけで大企業今多コンツェルンの娘婿となった杉村三郎が、ある事件に関する本の出版の依頼を受ける(杉村三郎はあおぞら書房という社内報を発行する部署に属している)
最初は本の出版の手伝いだけであったが、出版の為に事件の背景を探る内に事件の別の側面を知る事になる・・・
そして第2作となる「名もなき毒」では杉村三郎のもとに2つの事件が・・・
・アルバイトで雇ったある女性がとんだサイコ野郎で、困った挙句辞めさせるが、なぜか執拗に杉村を追い立てる
・そのサイコ野郎の身辺調査を行う中で、立て続けに起きている毒殺事件の被害者の1人に出会い、今度はインターネットサイトの立ち上げの協力を依頼される(杉村が自分で筆を進めた部分もある)
2つの事件が語るものとは…
感想としては
・アルバイトの女性ー原田いずみ がとことんムカつく
(噓をついて、兄の結婚式をめちゃくちゃにしたり、辞めさせられた腹いせにコーヒーに睡眠薬を入れたり、最後には恐喝未遂の行動に出る・・・)
・杉村三郎が優しすぎる
原田の執拗な嫌がらせは早い段階でエスカレートしていたにも関わらず、対応がゆるい
(睡眠薬入りコーヒーを飲まされた後も原田を疑ってなかったし、その後に電話がかかってきたときも、警察よりも家族謝った方が良いと悟すような態度だった)
底なしにお人好しなところが彼の良いところかもしれないが、あれほどのことをする女であれば家族にも被害が行く可能性も視野に入れないと!!
所変わって毒殺の事件は悲しい結末を迎える・・・
あんなひ弱で優しそうな外立くんが、、、おばぁちゃんに使うのをためらったならそのまま使わなければよかったのに・・・
理不尽な世の中に対する怒りが溢れだした瞬間だったのかな。
ただ、最後に彼が原田いづみに言った言葉はとてもリアルな言葉に感じた。
「人殺しだから、人殺しがどんなに空しいか分かるんです。あなたはそうなってはいけません。まだ間に合います。やめてください」
人の怒り、それには理由がある。他人に理解できるか出来ないかに関わらず。
怒りの行き先はその方向を間違うと、時として人を傷つける。
原田いずみも外立くんもケースは違えど、怒りをうまく吐き出せなかった。吐き出す先がなかったから世の中に吐き出すしかなったのかもしれない。